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誤嚥(ごえん)性肺炎

皆さん、明けましておめでとうございます。院長の田中です。
年末よりインフルエンザが流行しており、新型コロナ感染もまだ発熱外来で診断されるケースがありますので感染対策には十分お気を付けください。
当院では発熱外来をしておりますが、受診の際は必ず事前に電話でご連絡をお願いしておリます。
看護師が病状をお聞きしてから検査の有無や診察方法につきお知らせしております。ご協力をよろしくお願い致します。

今回の特集は誤嚥性肺炎です。
誤嚥はどの年齢でも起こりうるのですが、肺炎を発症するとなると高齢者や何らかの基礎疾患をお持ちの方に多く、重篤な場合死に至ることもありますし、繰り返す場合も多く、誤嚥しないようなリハビリや食事の工夫も必要になってきます。
この記事を参考にしていただければ幸いです。


誤嚥性肺炎とは?

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎とは食べ物や唾液、胃内容物が気管に入ってしまう誤嚥が原因で起こる肺炎のことです。
通常、誤嚥した場合、咳反射により気管から内容物を排出します。この反射機能が鈍ってしまうとうまく排出出来なかった結果、肺炎を引き起こすことがあります。
要因としては口腔内細菌の増殖、むせる等の自覚症状が乏しい誤嚥、胃食道逆流症による胃内容物の誤嚥、免疫力の低下など食事摂取中の誤嚥と関係なく発症することも多くあります。


症状は?

  • 発熱→高熱だけでなく微熱が続く程度のこともあります。又明らかな発熱がないこともあります。
  • 咳→寝ているときにもせき込む
  • 膿性痰→濃い色のついた痰
  • 胸痛や胸の重い感じ
  • 息苦しさ
  • 食事量が減った、食べられない、飲み込めない、時間がかかる、好みが変わった
  • 食事中のむせや咳が多い
  • 食後に声がかすれる
  • 喉の違和感や食べ物の残留感
  • 体重減少や倦怠感

予防・日常生活での注意点

誤嚥は食べ始めの一口目に起こりやすいです。
食前に簡単な体操を行うことによって食事に必要な口・舌・頬などの筋肉を刺激して唾液の分泌を促すことで飲み込みにくさやむせ返りの軽減が図れます。
顔や首の筋肉の緊張をやわらげたり鍛えるのも効果的です。


体操

  1. 腹式呼吸で深呼吸します。吐くときは口をすぼめてローソクを吹き消すイメージで数回繰り返します。
  2. 左右に1回ずつ首を回し、次に上下左右に首を曲げます。
  3. ぎゅっと肩をすくめた後(引き上げるイメージ)すっと力を抜いて肩を下ろします。2~3回繰り返した後、肩を中心に両手をゆっくり回します。
  4. 上半身をゆっくり左右に倒します。
  5. 頬を膨らませたりすぼめたりを2~3回します。
  6. 口を大きく開き舌を出す、戻すを2~3回、舌を出したまま左右にも2~3回動かします。
  7. 「パパパ、ラララ、カカカ」とまずはゆっくりと声に出してみます。5回程度繰り返した後、次は早く5回程度繰り返します。※発音する時の舌や唇の動きが飲み込むときの動きと似ています。
  8. 口をすぼめて息を強く吸込み、吸い込んだ息が喉にあたるようにして喉の感覚を感じてもらいます。
  9. もう一度ゆっくり深呼吸し、試しに唾液を飲み込んでむせがないか確認します。それから食事を始めましょう。
食前の体操

食事内容

●物を嚙み砕くのに問題がある場合
→きざむ、柔らかく煮る、マッシュポテトのように潰す。(例:きんとんやポテトサラダ等)
●かんだものを飲み込むときに問題がある場合
→柔らかくしたり、とろみをつける。※とろみをつける増粘剤は市販されています。納豆オクラ、山芋、昆布など食材そのものの粘りやとろみも利用できます。唐辛子の辛み成分カプサイシンが嚥下機能を改善すると言われているため唐辛子を含んだ食事も良いです。

誤嚥しやすいもの

  • さらさらした液体:水・お茶・味噌汁・ジュース
  • パサパサして水分が少ない:ゆで卵・焼き芋・カステラ・パン等
  • 液体と固形物が混ざっている:雑炊・高野豆腐・水分の多いフルーツ
  • 弾性がある:もち・かまぼこ・こんにゃく・飲むゼリー・寒天性ゼリーなど

食事中の姿勢

背もたれのある椅子に深く腰を掛け前屈みになって顎を引きます。
上向きでは飲み込みにくく、気道のふたが閉まる前に食物が滑り落ちて誤嚥する危険性があります。
胃液の逆流を防ぐためにも食後は最低でも30分は座っておきます。


口腔内を清潔に

口の中は胃や肺への入り口です。適度な温度と湿度があるので歯磨きやうがいを怠るとすぐに細菌が繁殖します。
体調不良などで食事が摂れないときでも歯磨きやうがいをして舌も清潔にし口の中の細菌を増殖させない事、そして肺へ運び入れないことが大切です。
※入れ歯のある場合:毎食後はずして洗浄しましょう。義歯用の歯ブラシ、または柔らかい歯ブラシでぬめりがなくなるまで洗いましょう。
一般の歯磨き粉は研磨剤が入っていることが多いので傷がつきやすく細菌の温床となるので使用は避けてください。
日中は食事以外では入れ歯を外される方がおられますが、起きている間は装着しておくことでリハビリにもなります。


誤嚥した時の対応

激しく咳込み苦しがっていると慌ててしまいますが、まず落ち着いて顔を下にむけ口の中に残っているものを吐き出させましょう。
背中を下から上にさすりゆっくり呼吸するように声をかけます。背中を軽くトントンとたたくのは良いですが強くたたかないでください。
口を閉じていたり開き具合が小さいとせっかく出した食物が再び気管に入り込むこともあるので口を開けて咳をするように促します。
落ち着いてから誤嚥しないよう可能であればブクブクうがいで口の中をきれいにし大きく深呼吸します。むせなければ食事を再開してください。


最後に…

認知症の方で精神状態を安定させるために使う薬(向精神薬)が誤嚥性肺炎を引き起こす原因となることがあります。
口の中に何も入ってない時、唾液と一緒に口腔内の細菌が気管に流れていくのです。
口腔ケアが非常に重要で、食後に関わらず食間や就寝前にも口の中を清潔にすることで誤嚥性肺炎の発生を3分の1に減らすと言われています。

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