肺気腫
皆さん、新年あけましておめでとうございます。去年はあっという間に一年が過ぎてしまいました。
寒さが厳しくなり、コロナ感染者が増加、インフルエンザ感染者が出始めており、今後の流行が懸念されます。当院は12/31に半日発熱外来をしましたが、検査した7人中5人にコロナ陽性、1名インフルエンザ陽性でした。
今後同時流行のリスクが高まる時期となり、皆様におかれましては十分感染対策を実施して頂き、かからないよう、うつさないように心がけてください。
当院では発熱外来をしておりますが、人数に限りがありますのでお断りする場合があります。早めにお問い合わせください。他院への紹介もしておりますのでご了解ください。
今回の特集は肺気腫です。
喫煙者に多く、高齢になるにつれて症状が出やすいため、年のせいだと思われがちですが、治療効果を期待するのは早めに診断する必要があります。
気になる方はこの記事を参考に受診をご検討ください。
肺気腫ってどんな病気?
気管支の末梢にある肺胞壁が炎症によって壊れてしまい、少しずつ空気の通りが狭くなります。
その結果、風船の弾力が無くなって伸びきったように、肺が膨らんだまま縮みにくくなり、空気を十分に吸い込んだり吐き出したりすることが出来なくなる病気です。

肺気腫の症状は?
主に動いた時の(特に階段や坂道など)息切れ、咳、痰です。
慢性の咳や痰は50代以上に、動いた時の呼吸困難は60代以降でみられることが多いです。
時間をかけて徐々に進行するため将来外出出来なくなり入浴や洗面なども息苦しくて出来なくなってしまいます。
年齢が上がるにつれて多くなり、年のせいだと思われがちですが、同年者と比べて劣ると気が付けば疑いましょう。
肺気腫の原因は?
最も多い原因は喫煙です。ほとんどの方が1日20本、20年以上の喫煙をしています。
他には職業上の塵埃、化学物質、大気汚染、などがあります。
肺気腫の診断
- 胸部レントゲンにて肺の過膨張、胸部CTにて肺胞の気腫性変化を確認します。
- 肺機能検査にて1秒間に吐き出される量(1秒量)を調べて気管支の開き具合をみます。肺気腫によって気管支が狭くなると1秒量が減ります。
- 動脈血採血検査にて酸素と二酸化炭素のガス交換が上手く出来ているかを調べます。空気の入れ替えが上手く出来ず、二酸化炭素がたまってくると頭痛や手の震え、日中の眠気が起きることがあります。動作後に低酸素状態となりやすいため、動作後はパルスオキシメーター(指先で酸素値を想定する機器)を用いて低下を確認します。
治療は?
薬物療法
気管支拡張薬の吸入が2種類あり単独または併用で使います。
喘息の合併が疑われるケースでは吸入ステロイドも使います。
張り薬や飲み薬もありますが、主に吸入薬を使います。効果的に吸入する為に一旦息を吐き出してから深呼吸するようにゆっくり深く吸うことが大切なポイントです。
呼吸リハビリ
呼吸が苦しいとどうしても速く行動しがちです。
首や肩の筋肉を使う胸式呼吸になっている方が多いです。
これでは体力を消耗し息切れしやすく呼吸に関係する筋肉に負担がかかり、こわばってしまいます。呼吸も浅くなり十分なガス交換が出来ずさらに苦しくなる悪循環になります。
- 首や肩のストレッチをしてこわばった筋肉をほぐしていきましょう。
- 腹式呼吸を行い肺のすみずみまで空気の入れ替えをすることで体力の消耗を少なく出来ます。
- 口すぼめ呼吸(鼻から息を吸い口をすぼめて長く吐く呼吸法)と合わせることで呼吸困難からの回復が早くなります。
- 息苦しいため歩行量が減ることより下肢筋力が低下します。その結果ますます動けなくなるため下肢筋力を鍛えることも呼吸リハビリに必要です。
在宅酸素療法
薬物療法を行っても息苦しさが続き食欲が落ち眠れないなど生活に支障をきたす場合に行います。鼻カニューラというチューブを鼻につけ常に酸素ボンベを持ち歩けば外出や旅行も可能です。保険が適応されます。
在宅人工呼吸療法
上記の治療を行っていても頭痛がしたり、睡眠はとれているのに疲労感を感じたり、高二酸化炭素血症、呼吸困難、体重増加、下肢の浮腫がある場合導入することがあります。人工呼吸器【鼻マスク】を使うことで横隔膜の負担を減らし、疲労が軽減し息切れや睡眠の改善、生活の質の改善につながります。保険が適応されます。
日常生活の注意点
- 第一に禁煙することが重要です。
- 感染により増悪しやすいのでインフルエンザワクチンや新型コロナワクチン、肺炎球菌ワクチンなど接種することが推奨されています。しっかりと手洗いやうがいを心がけましょう。
- 食事中に息苦しくなったり、すぐ満腹になる等栄養も不足しがちです。高カロリー・高たんぱく・栄養バランスのとれた食事を少量ずつでも回数を増やしゆっくりたべましょう。市販の栄養補助食品やおやつの間食をしたり、ジャムやマヨネーズ等の調味料でカロリーアップをめざしましょう。ただし、塩分の取り過ぎには注意が必要です。
- 急性増悪と言って咳や痰の増加、息切れなどの症状が急に悪くなってしまう事があります。痰の色が透明から黄色や緑になる、動かなくても息切れする、全身の痛みや熱が出ることもあります。我慢せず早めに病院に連絡をして対処する事が大切です。
最後に…
喫煙者に多い病気で、タバコを吸っているから、年のせいだからと思って受診するタイミングが遅れると治療も遅れます。
症状を軽くすることはできますが治る病気ではありません。
一生付き合わなければならないので、少しでも息苦しくなく過ごせるようにかかりつけ医の治療を継続してください。
そして喫煙している方は禁煙してください。