肺結核
みなさん、こんにちは、院長です。
はりせんぼんの箕輪さんが肺結核で入院という報道で、肺結核がクローズアップされています。昔は死因の1位となっていた時代がありましたが、現在でも結核で亡くなる方はいますし、人に感染する伝染病です。健康に過ごしてきた人に発症することもあるので、他人事ではありません。
長引く咳の患者さんが受診されたら、まず結核を念頭において診断するようにしております。誰もがかかりうる身近な病気と考えられますので取り上げました。参考にしてください。
結核菌とはどんな菌?
酸に強いために抗酸菌と言われますので、胃の中でも死にません。
抗酸菌には結核菌と非定型抗酸菌が分類されますが、後者はヒトからヒトへは感染しません。発育が遅いために培養に時間がかかります。
肺結核とはどんな病気?
肺結核は空気中の結核菌を吸いこんで肺で菌が繁殖して炎症を起こす病気です。
潜伏期間が長く徐々に進行するため、初期には無症状ですが、やがて倦怠感、食欲不振、寝汗、咳や痰(時に血痰)などの症状が出現します。病巣の影がレントゲンに現れるまで半年以上かかります。
肺以外ではどこに病巣をつくるか?
全身のいたるところで病巣をつくりますが、最も多いのはリンパ節(頚部リンパ節が最多)で、脊椎にできる脊椎カリエス、脳や脊髄でおこる結核性髄膜炎など重症に至るものもあります。血液中に入り込んで全身に広がれば粟粒結核と言います。
どのように感染、発病するのですか?
肺結核の患者さんが、咳をした時にしぶきとなって排出された菌が空気中に漂い、その空気を吸うことで感染が起こります。他の感染症との違いは感染しても全員が発病するわけではなく発病するのは約10~20%です。
ツベルクリンが陽性で結核に対する免疫力があれば感染しませんが、体力が弱って免疫力が低下していたり、菌が強い場合は肺に達した菌が繁殖して肺結核を発病させます。
結核にかかりやすい人とは?
患者さんと接触する機会の多い医療従事者に多いです。
免疫が低下した人には、長期のステロイド治療や抗がん剤治療を受けている人、コントロールの良くない糖尿病や透析を受けている人、HIV感染(エイズ)などがいます。
肺結核の診断方法は?
- レントゲン所見で結核を疑う陰影(散布性粒状影や空洞陰影など)
- 喀痰検査
- 塗抹検査~痰をガラス板に塗りつけて顕微鏡で観察します。これで抗酸菌が検出されれば、結核か、非定型抗酸菌のどちらかで確定は困難です。
- 培養検査~培養には4週から8週かかりますので、早期診断には役立ちませんが、菌の同定や薬の効き具合を見るために必要な検査です。
- 遺伝子検査~少量の菌でも遺伝子レベルで検出できる核酸増殖法(PCR法)を用いれば1日で診断が可能となりました。
- 血液検査~菌のインターフェロンγを検出するQFT法が最近導入され、発病前の感染段階で早期診断できるようになりました。
痰が出ないとき、喀痰検査で診断がつかないときは?
胃液を採取して、抗酸菌の塗抹検査や遺伝子検査を行ったり、気管支鏡で病巣よりサンプルを採取して同様の検査を行います。
治療は通院?入院?
排菌している場合が入院治療の適応となります。周囲への感染を防止する目的と、入院により確実に治療をするためです。
排菌とは喀痰の塗抹検査で菌を検出した場合です。遺伝子検査のみで診断した場合は排菌とは言わず、通院で治療が可能です。箕輪さんが入院したのは、排菌しているためかと想定されます。
治療法は?
抗結核剤4剤(ピラジナミド、イソニアジド、リファンピシン、ストレプトマイシンまたはエタンブトール)よる化学療法が行われます。
最初の2か月はピラジナミドを含めた4剤、残りの4か月を3剤という投与方法が標準となっています。
身近に結核患者さんが発生したときどうすればいい?
家族や同僚など感染している可能性が高い人を対象に保健所が接触者検診を行ないます。
以前はツベルクリン反応を行っていましたが、最近では感染を血液検査(QFT法)で早期に診断できるようになりました。陽性の場合、潜在性結核感染としてイソニアジドの6ヶ月間内服による予防を行うことになっています。
結核の予防は?
日本では結核予防ワクチンとしてBCG接種が乳児(生後6か月まで)を対象に行われています。ただし、効果は15年くらいでなくなっていきます。
日頃から注意することは?
- 咳が長引く、微熱が続いているなどの症状があれば結核が疑われます。内科できれば呼吸器専門医を受診してください。
- 年一回、職場の検診があれば必ずレントゲン検査を受けましょう。もし職場でないときはご自分で健康診断を受けるようにしてください。
- 免疫力が低下するとかかりやすくなりますので、規則正しい生活を心がけ、過労や睡眠不足がないように注意しましょう。
最後に…
結核はいつどこで感染するかもしれません。風邪かな?それにしては長いと思ったらまず疑ってください。免疫力の低下している患者さんでは全身に広がり、亡くなるケースもあります。
当クリニックでは結核の検診・診断・治療ができますので心配な方はご相談ください。
コメント(5)
2017年3月20日
結核の診断について伺いたく、
喀痰検査の遺伝子検査も田中クリニックさんの中で行って頂けるのでしょうか?
投稿時刻 20:32 | たか
2017年3月20日
検査に適した良質な痰であれば遺伝子検査はできます。当院ではPCR法による検査となります。
結果は翌日にはわかります。
投稿時刻 21:58 | 院長 田中
2024年7月23日
神奈川県在住30代女性です。
発熱や風邪症状を繰り返し、解熱しても咳と痰の症状のみ3ヶ月以上続いています。レントゲンで異常を指摘されCT検査を受けたところ結核の疑いと言われました。
現時点で痰の塗抹検査は2回陰性、胃液の検査も陰性でインターフェロンγの結果待ちの状態です。痰の塗抹検査はもう一度実施予定です。
現在も発熱を繰り返しており、息苦しさや全身の倦怠感が強く、仕事に行けないどころかシャワーなどの日時動作すら息が上がってしまい困難な状況です。
乳幼児の子どもが2人いて、自宅での隔離も困難な状況なのですが、現時点での「結核疑い」の状態では、検査を実施している総合病院への入院はできない(結核病症はない病院です)、結核治療の専門病院にも、塗抹検査で陽性とならなければ入院はできないと言われてしまいました。
インターフェロンγの結果が出るまでにはまだ時間がかかりそうですが、このまま自宅で不完全な隔離のまま過ごしていて良いのでしょうか。何か入院する手立てはないのでしょうか。
お忙しい中恐れ入りますがご回答いただけると幸いです。
投稿時刻 06:36 | 陶器
2024年7月24日
続けての質問となり失礼します。1つ前の投稿にて質問させていただいた30代女性です。
3回目の喀痰塗抹検査も陰性となり、インターフェロンγの試験(Tスポット)も陰性でした。
しかし担当する医師は結核の疑いはまだ晴れないと言って、気管支鏡にて気管支(肺ですか?)の洗浄を行い、洗浄液を検査することになりました。
Tスポット陰性であれば結核の疑いは晴れるのではないかと思うのですが、結核の診断を目的とした気管支鏡検査まで受ける必要はあるのでしょうか。結核以外の原因を探る目的ならば納得もいくのですが、そうではないようなのです。
担当医からは気管支鏡検査はとても苦しいものだと聞かされ不安でいっぱいです。
担当医が結核を強く疑う根拠としては
・CT画像で肺結核に特徴的な所見が見られること(素人なので詳しくはわかりませんが、白い粒々とした影があるようでした)
・咳や痰の症状が続き、発熱を繰り返す、体重減少といった臨床症状があること
・CRP4.4とさほど高値でないものの血沈が上昇しているという結核に特徴的な検査結果が見られること
以上のようです。
やはり結核を疑い気管支鏡検査までした方がよいものなのか、あるいはセカンドオピニオンを受けたほうがよいのか、などご意見お聞かせ願います。
投稿時刻 08:01 | 陶器
2024年7月31日
陶器さんへ
Tスポットが陰性であれば結核ではないと思われます。感染して早期なら陰性もありえますがしっかり陰影が出ていますので否定して良いでしょう。
非結核性抗酸菌症の疑いはあるので確認するために気管支鏡をするのかもしれません。
陰影は結核と類似しています。
培養の結果を待ってそれでも結果が出なければ気管支鏡によるサンプルで調べることにしてはどうでしょうか?
ただし症状があって診断がつかず治療が遅れることになりますから、今の症状を何とかしたいのであれば早く検査を受けることをお勧めします。
投稿時刻 20:17 | 院長 田中