肺炎球菌ワクチン
みなさん、こんにちは、院長の田中です。
今年の夏は暑かったですね。少しは涼しくなりましたがまだ残暑は続くようですので、体調管理に気を付けてください。
今年は例年より熱中症の患者さん受診が多かったです。水分補給を忘れないようにご注意ください。
今回の特集は肺炎球菌ワクチンです。
テレビでのCMでもご存知でしょうし、65歳以上で公費負担年齢の方には市町村から接種の案内が来ていると思います。
インフルエンザワクチンは周知されていますが、まだ肺炎球菌ワクチンは十分知られていません。
肺炎はインフルエンザのような流行性疾患ではありませんが、高齢者の場合、基礎疾患がある場合は重篤になる可能性がありますので、ワクチン接種は予防の観点から重要です。
自分のためにも家族のためにも記事を参考にされ知識を高めていただければ幸いです。
肺炎球菌とは?
肺炎を引き起こす原因となる細菌のひとつで、日常でかかる肺炎で一番多い原因菌です。
肺炎は高齢者にとっては命に関わりかねない怖い病気で、免疫力の低下をきたしてくる65歳以上の高齢者では発症率が高く重症化することが多くなり、2011年には我が国の死因別順位で脳卒中を抜き3位となりました。
また、肺炎で亡くなる方の約95%は65歳以上となっています。
肺炎球菌が引き起こす病気は肺炎のほかに、気管支炎、副鼻腔炎、中耳炎、髄膜炎などがあります。
肺炎球菌ワクチンとは?
肺炎球菌によって引き起こされる感染症を予防するためのワクチンです。
成人の肺炎球菌ワクチンは現在2種類のワクチンがあります。
2014年10月より65歳以上の高齢者を対象とし、定期接種にもなっている「ニューモバックス(23価肺炎球菌ワクチン)」と、2014年6月より65歳以上の高齢者にも任意での接種が認められた「プレベナー13(13価肺炎球菌結合型ワクチン)」です。
肺炎球菌には約90種類もの型があり、ニューモバックスはその中でも感染する機会の多い23種類に免疫をつけることが出来ます。
肺炎を引き起こす病原体は肺炎球菌以外の細菌やウイルスもありますので、これらのワクチンで肺炎すべての予防が出来るわけではありません。しかし肺炎球菌ワクチンを接種しておけば、免疫をつけることで発症を予防し、重症化を防ぐ効果が期待出来ます。
接種した方がよい人は?

高齢者は肺炎の典型的な症状が現れにくく、基礎疾患がある場合には病状が急速に悪化することがあり致命率も高いので予防することが重要です。
65歳以上の高齢者、気管支喘息や肺気腫などの慢性呼吸器疾患や心臓病、糖尿病、肝機能障害、腎不全などの基礎疾患をお持ちの方は肺炎にかかりやすく重篤になりやすい事からワクチン接種が望ましいと思われます。
また脾臓を摘出された方は免疫能が低下しているためワクチン接種をお勧めします。
抗生物質があるから予防しなくても心配ないのではと思われる方がいるかもしれませんが、抗生物質が効きにくいタイプの肺炎球菌が増加して問題となっています。肺炎球菌ワクチンはこのような薬剤耐性肺炎球菌にも効果があります。
ニューモバックスとプレベナーの違いと共通点
- 対応する肺炎球菌の型の種類
■ニューモバックス➡23種類あり、肺炎球菌感染症全体の約8割に対して有効とされていますが、免疫記憶としては確立しないので、5年以上の間隔をあけて再接種が必要になる場合があります。
■プレベナー➡13種類あり、肺炎球菌の約6~7割に対して有効とされています。ニューモバックスと違い免疫記憶が確立されるので、再接種の必要はありません。基本的にニューモバックスに含まれている型を厳選したものにニューモバックスには含まれていない6A型という近年増えている型を含んでいます。 - 定期接種
■ニューモバックス➡平成26年10月1日より平成31年3月31日まで65歳以上の高齢者を対象に一部公費負担で一度に限りワクチン定期接種が出来ます。公費対象の方は年度によって異なり、対象の方には自治体から接種券が郵送されます。過去に同じワクチンを接種したことのある方は定期接種の対象外となります。また、60歳から65歳未満の方で、腎臓・心臓・呼吸器に障害がある、ヒト免疫不全ウイルスによる障害をお持ちの方で障害の程度により定期接種の対象となる場合もあります。
■プレベナー➡現在、定期接種とはなっておりません。任意接種(自費扱い)となります。 - 接種料金
■ニューモバックス➡公費負担がある場合の自己負担4000円(姫路市の場合)
※市町村ごとに定期接種に対する助成の有無やその内容は異なる為市町村への確認が必要です。自費で受ける場合は医療機関によって異なりますのでお問い合わせください。
■プレベナー➡自費扱いのみ お問い合わせください。 - 接種時期
両方ともインフルエンザワクチンと違い流行前に接種する必要がありませんので、年中いつでも接種できます。ただし、インフルエンザワクチンも接種希望の場合は1週間の間隔をあけて接種できます。ただし、医師が必要と認めた場合には、同時に接種することも出来ます。 - 接種方法と副反応・注意点
■ニューモバックス➡上腕に0.5mlを皮下注射もしくは筋肉注射
■プレベナー➡上腕に0.5mlを筋肉注射
両ワクチンとも接種後、注射部位を揉む必要はありません。 接種後急激な副反応(アレルギー反応など)が出る場合がありますので、病院内でしばらくの間(15分から30分程度)様子を見てください。当日の入浴は可能ですが注射部位をこすらないように気をつけてください。また激しい運動も避けてください。
局所の副反応としては、接種部位の痛み、発赤、腫脹、かゆみ、だるさなどがありますがいずれも数日中にはおさまっていきます。かゆみで掻き壊さないように冷やすなどして対応してください。全身性の副反応としては、筋肉痛や疲労感および頭痛、発熱などがあります。 - 接種後のワクチンの効果
■ニューモバックス➡抗体価は接種後1カ月で最高値となり、その後4年間はほとんど低下しません。5年後にはピーク時の80%にまで抗体価が低下しますがまだ効果は期待出来ます。再接種については、短期間では局所の副反応が強く出ることを考慮して5年後以降の再接種(1回のみ)が認められています。
■プレベナー➡上記①のとおり、1回接種で免疫記憶効果があり、65歳以上の高齢者に関しては一度の接種でよいと言われています。 - ワクチン接種の予約
当院ではどちらのワクチン接種についても事前予約が必要です。
ニューモバックス(PPSV23)とプレベナー(PCV13)のワクチン接種の考え方
日本呼吸器学会と日本感染症学会の合同委員会が65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方(2015年1月)を示しています。
ニューモバックス未接種者で公費の対象年齢、公費の対象年齢以外で分類し、定期接種と任意接種の受け方をチャートに示しています。
ニューモバックス既接種者はニューモバックスとプレベナーの任意接種の受け方をチャートに示しています。肺炎のリスクの高い方は両方を接種することが望ましいと考えます。
「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方(日本呼吸器学会/日本感染症学会合同委員会)」のチャート図をご参考にどうぞ。
肺炎を予防するために
肺炎を予防するためには、予防接種だけではなく、体の抵抗力を高めるために、規則正しい生活、バランスのとれた食事、適度な運動、持病の治療、禁煙が大切です。
又、外出時、特に人ごみの多い場所ではマスクを着用する、外出から帰った後のうがい・手洗いの励行、口腔内の清潔を保つこと、飲食の時にむせないようにすることなどを毎日の生活の中で心がけてください。
最後に…
肺炎球菌ワクチンについては以前も特集で取り上げましたが、今回内容も新たに再掲載いたしました。
最近、肺炎球菌ワクチンも取り上げられるようになり、多くの方に知られるところとなって、お問い合わせや予約が増えております。
1回の接種で5年は効果が持続しますし、副反応もインフルエンザと変わりないので、肺炎のリスクのある方にはぜひ接種をお薦めします。